- 2007年7月22日 01:08
- テリスの日記
街は不気味なほど静まりかえっていた。
招待状を受け取ったラヴィニアは、仲間を連れてここにやって来た。
この街の様子を見たときの、彼らの顔、私は一生忘れないだろう。
街には誰もいない。
ここに暮らしていたはずの人間は、誰もいない。
いるのは、そう、物言わぬ屍体だけ...。
領主は怯えていた。
自分の目の前で起こった光景を、信じることが出来ずに。
自分以外の人間が、一瞬で死に絶えた、その光景を...。
私は言った。
「貴方は私を覚えていらっしゃいますか?」
領主は首を横に振った。
「それは残念です。」
そう、それは本当に残念なこと。
「私はずっと、貴方の足下で一緒に暮らしていたというのに。」
貴方がそう言うから、私はそれを受け入れたというのに。
領主は信じなかった。
目の前にいるのが、自分の息子だということを。
10年前に自ら拒絶した、封じ込めた、忌まわしい過去だということを。
「私は貴方を恨んでいます。」
そう、だから私はここにいる。
「もうこの街に人はいないのです。」
そう、私が、全て、消し去ったから。
「さぁ、貴方も、死ぬのです。息子の手で。」
ラヴィニアたちが部屋に入ってきた。
いいタイミングだ。
私は、この瞬間を、見せたかったのだから。
「遅かったですね。ラヴィニア。そして、そのお仲間さんたち。」
そして私は懐からナイフを取り出す。
「私はウォーリス。ラヴィニアの兄です。」
そう、私とラヴィニアは兄弟...。
小さい頃から一緒に育った、兄弟のようなもの...。
「そしてこの子はシリル。可哀想に、幼い頃からここに幽閉されて育ちました。」
そう、この子は可愛そうな子...。
父親に拒絶され、母親に先立たれ、そしてここにいる...。
「さぁ、シリル。これが貴方の父親です。憎むべき存在です。」
私は身体の主導権をシリルに返した。
シリルはきょとんとした顔で父親の顔を見ている。
「貴方をここに閉じこめたのは父親。さぁ、どうすればいいか、分かりますね?」
ラヴィニアたちがそれを止めようとするのは分かっていた。
しかし、彼らは動けない。
床に描かれた魔法陣、それが彼らを足止めした。
「さぁ、可愛いシリル。そのナイフを......。」
シリルは、ナイフを握りしめた。